はじめに:カタログを眺めていて感じた“ある違和感”
家づくりを考え始めると、多くの人がまず手に取るのがハウスメーカーのカタログです。設備や間取りの提案、施工事例、建築実例など、眺めているだけで夢が広がります。私もその一人でした。
しかし、複数のカタログを見比べているうちに、ある「感覚の差」に気づいたのです。
同じように見えるリビング写真、同じような住宅の外観。でも、大手ハウスメーカーの施工例には**「暮らしの豊かさ」や「洗練された印象」**が漂っているのに対し、中堅以下のカタログでは、どこか現実的で、少しだけ“普通の家”に見えてしまう。
その差はどこにあるのか。
設備? 家具? 壁紙?
いえ、決定的な違いは「外構と室内の関係性」にあると気づきました。
カタログ写真が語る「暮らしの質感」
住宅カタログは、ただ間取りや素材を紹介するための資料ではありません。企業が伝えたい「暮らしの価値観」や「世界観」が濃縮されている、いわば“住宅の哲学書”のようなものです。
そうした中で、大手ハウスメーカーのカタログには**「室内と外構の一体感」**が必ずと言っていいほど表現されています。
- 広い窓の外に中庭やテラスが広がる
- リビングとウッドデッキがシームレスに続く
- ソファに座る家族の視線の先に、美しく整えられた植栽
- 夜には外構照明が灯り、窓越しに奥行きのある景色が見える
これらの写真は、単に家の間取りや設備を紹介しているわけではなく、「住む人の暮らしが、どこにどう広がっていくか」を見せているのです。
そして何より注目すべきは、どの写真にもカーテンがかかっていないこと。そこに写る家は、“外とつながること”を前提として設計されているのです。
一方、中堅メーカーのカタログに見られる傾向
対照的に、中堅ハウスメーカーやローコスト系のカタログを見ると、確かに魅力的な施工例が並んでいます。内装も美しいし、設備も充実している。でも、なぜか「空間の豊かさ」が伝わってこない。
よく見ると、以下のような違いがあることに気づきます:
- 窓には必ずレースカーテンや遮光カーテンがかかっている
- 窓の外はブロック塀、砂利、または隣家の壁
- 外が写っていない写真が多い(外は“切り離された空間”)
- 室内は丁寧に整っているが、風景や光の流れが感じられない
つまり、室内と外が「断絶」している。この構造上の意識の違いが、家全体の印象、さらには住まいとしての魅力の伝わり方に大きな差を生んでいるのです。
「カーテンがある=暮らしの断絶」ではないが…
誤解してほしくないのは、「カーテンがある家はダメ」と言っているわけではありません。防犯やプライバシーの観点から、カーテンが必要な環境は当然あります。
しかし、大手ハウスメーカーの事例を見ていると、「そもそもカーテンがいらない設計」をしていることが多いのです。
例えば:
- 外からの視線を遮れる中庭や坪庭を活用
- 視線の抜けを意識した窓配置
- 外構に視覚的な美しさと意味を持たせている(借景・ライティング・植栽)
- 開けておいても“見せられる風景”を作っている
だからこそ、大きな窓が“開放”されていても安心で、むしろ家の一部として外が取り込まれている。その設計思想が、「オシャレな家」という印象に直結しているのだと気づきました。
外構と室内の“つながり”が家を格上げする
この気づきは、私にとって大きな発見でした。これまで「オシャレな家は内装が良い」「間取りの工夫がすごい」と思っていたのが、実は“窓の外”にこそ、豊かさを感じさせる要素が詰まっていたのです。
家の中で過ごしていても、ふと視線を上げると緑が揺れている。テーブルに座ったときに、奥行きのある景色が広がっている。夜になれば、庭の植栽が間接照明に照らされ、落ち着いた雰囲気を演出する。
それらはすべて、**「外構を暮らしの一部として設計しているかどうか」**にかかっています。
つまり、オシャレな家とは、素材や設備が良い家ではなく、“空間の連続性”を丁寧に設計した家なのだと、カタログを見ながら強く感じたのです。
コストをかけなくてもできる、外とのつながり
ここまで話すと「それって結局、お金をかけられる大手メーカーだからできるんでしょ?」と思われるかもしれません。
もちろん、外構に予算をかけられれば、選択肢は広がります。ただ、本質は“考え方”です。
ちょっとした工夫でも、“つながる暮らし”はつくれます:
- 視線が抜けるよう、窓を隣家ではなく庭側に設置
- 目隠しフェンスの代わりに、植栽でやわらかく囲む
- 室内と同系色のタイルでテラスを仕上げ、連続性を出す
- 窓の外にスポットライトを設置し、夜景を演出する
これらはコストを最小限に抑えながらも、「暮らしの質感」をぐっと引き上げてくれる工夫です。
終わりに:カタログの“空気感”に注目してみよう
家づくりをしていると、つい「間取り」や「収納」「設備スペック」にばかり目が行きがちです。もちろんそれらも大切な要素ですが、本当に住んで気持ちいい家とは、“空気感”のある家ではないでしょうか。
そしてその空気感の正体こそが、**「外とつながる室内」**にある。
私が住宅カタログを見て感じた違和感は、まさにこの“空間の在り方”の違いだったのだと思います。
もしあなたが今、ハウスメーカーのカタログを手にしているなら、ぜひ窓の外にも注目してみてください。カーテンが開いているか、何が見えるか。
その一枚の写真から、「暮らしの質」がにじみ出ているかどうかが、見えてくるかもしれません。
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