「黒い外壁ってカッコいいよね」「黒のキッチンって高級感あるよね」
こんな言葉に共感した方、少なくないと思います。近年、住宅のデザインで“黒”をベースにした提案が増えています。SNSでも、黒の外観やキッチンが「映える」と話題になることも。
しかし、家づくりを経験した人ほど「黒を選ぶときは慎重に」と口を揃えて言います。
なぜでしょうか?
■ 黒は「映える色」だけど、現実では目立つ色
モデルハウスや広告では、黒は本当に魅力的に見えます。引き締まった印象と重厚感、上質な雰囲気。確かに黒は「高級感を演出する色」として優秀です。
ですが、**実生活では黒は「汚れ・傷・ホコリ・劣化が目立つ色」**でもあるのです。
ここを無視して「見た目だけ」で決めてしまうと、後悔する可能性が高まります。
■ 黒い外壁のリアル:水垢・雨垂れ・色あせ
黒い外壁は特に注意が必要です。
- 雨の流れた跡が白く目立つ(雨垂れ)
 - カルキや汚れが浮き出てくる(水垢)
 - 紫外線による退色や色ムラが出やすい
 
こうした現象はどの外壁でも起こり得ますが、黒はそれが特に「見える」色なのです。
きれいな黒を維持したいなら、こまめな洗浄や定期的なコーティングが必要になります。
■ 黒いキッチンや洗面台:水まわりとの相性に注意
黒いキッチンカウンターや洗面ボウルも人気ですが、水と非常に相性が悪い色でもあります。
- 水垢や石鹸カスが白く浮き上がる
 - 指紋や手の脂が目立つ
 - ツヤのある黒は拭き傷や擦り跡が映り込む
 
毎日使う場所だからこそ、**「美しさを保つには常に拭き掃除が必要」**というプレッシャーが生まれやすくなります。
■ 黒い床・建具:生活感が出やすい
黒い床はモダンな印象を与えますが、現実はなかなかシビアです。
- ホコリ・髪の毛・ペットの毛が白く浮く
 - 物を落としたり家具を引いた跡が傷として目立つ
 - フローリングの艶が不自然な反射を生む場合も
 
生活する中で自然とつく“細かな傷や汚れ”が、**「住み始めた瞬間から気になる」**のが黒い床や建具の難しさです。
■ 車の黒を思い出してみてください
「黒い家」と「黒い車」には共通点があります。
- 雨の後すぐに水垢がつく
 - 乾いたあとに白い輪ジミ(ウォータースポット)が出る
 - 洗車キズや拭きムラが光に反射して目立つ
 - 洗車してもすぐにホコリが浮く
 
そして、最後にこう思う人も多いはずです。
「かっこよかったけど、もう黒は買わない」
家も同じです。維持が大変な“見た目重視の選択”は、長期的な満足度を下げてしまうかもしれません。
■ じゃあ黒は絶対NG?→いいえ、「工夫して使えば魅力的」
ここまで少し黒をネガティブに語ってきましたが、黒は全否定すべき色ではありません。
むしろ、使い方次第で非常に効果的に活かすことができます。
大切なのは、**「どこに」「どう使うか」**です。
✅ 対策1:外壁全体ではなく「一部アクセント」で使う
外壁すべてを黒にせず、一面や一部の素材に限定して黒を使うだけで、印象はグッと引き締まります。
- 玄関周りだけ黒のサイディング
 - 2階部分の一部に黒を配置してコントラストに
 - 木目調×黒の組み合わせで、和モダンな外観に
 
→これだけでも十分に黒の効果は活かせます。
✅ 対策2:マット系や傷の目立ちにくい素材を選ぶ
黒=艶あり=傷が目立つ、というのが典型的な落とし穴です。
あえて艶消しマット仕上げの素材を選ぶことで、指紋や拭きムラも目立ちにくくなります。
また、室内なら「黒」よりも「チャコールグレー」や「黒に近い木目調」など、“黒っぽい”色で抜け道を探すのも有効です。
✅ 対策3:メンテナンス性を優先した素材選び
- 外壁なら「セルフクリーニング機能」付きの素材を使う
 - キッチンなら「水垢が目立ちにくい人工大理石」などを選ぶ
 - フローリングは「マット仕上げ」「ブラッシング加工」で傷を目立たせない
 
→黒にこだわるなら、**「目立ちにくさ」「拭きやすさ」「傷のつきにくさ」**をセットで検討すべきです。
✅ 対策4:掃除・メンテナンスの導線も考える
「黒を選ぶ」=「汚れが目立つ前提」なので、掃除がしやすい導線や環境も設計段階から意識しておくと安心です。
- 高圧洗浄機で外壁が届くよう設計する
 - 床材は掃除機・モップがかけやすい段差レスに
 - 掃除しやすいカウンターやシンク形状を選ぶ
 
→「汚れてもすぐ掃除できる」=ストレスになりにくい黒、になります。
■ まとめ:「黒=高級感」に安易に飛びつかないで
- 黒はカッコいいけれど、汚れ・傷・退色が目立ちやすい
 - 特に外壁・水回り・床などは注意が必要
 - 黒い車の管理が大変だった人は、家も同じ課題に直面する可能性大
 - でも工夫すれば、黒の魅力を十分に活かせる
 - 大切なのは「維持」と「生活のしやすさ」を見据えた色選び
 
“黒い家”は確かにカッコいい。
でも、それを何年後も「カッコよく保つ」ための視点を持つことが、本当に豊かな暮らしにつながっていきます。
流行に流されず、自分たちのライフスタイルに合った選択を大切にしましょう。

  
  
  
  
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